蟻の思いも天に届け

春夏秋冬を過ごしたいキミへ

胡蝶の夢 DREAM BOYS 2019

 走れ この瞬間を

 始まっていく時 つかまえにいく

笑顔と悲しみが くり返す真実

 このステージが始まる

ーーーーーNext Dream

 

せり上がるステージ、帝国劇場の中心に2人。真っ白な衣装を身にまとい堂々と立つ姿はとっても眩しかった。煌びやかな衣装は彼らに光を集め、集まった光を何倍にも輝かせながら舞う2人。

私は周りを尊重して思いやることができるWゆうたが心底好きだ。この舞台もそんな姿を随所に感じた。自分1人が前に出て輝くのではなく、みんなで輝こうよと言ってくれているような優しい空間だった。

 

全36公演、観劇された方々の感想を日々見かけるだけでとても幸せな気持ちになっていた。様々な表現で綴られている思いはどれもその人の熱量が伝わってくる。それが自分の好きな人の事なら、なおさら嬉しい。すでに素晴らしいドリボ備忘録が存在するので、ここでは詳しいあらすじ等は省き、岸くん神宮寺くん中心となってしまうが、率直に私が感じた思いを残しておきたい。

 

 

Act.1

< プロローグ > 

それぞれがスポットライトに照らされながら、抱える過去を1人語りすることで即座に物語へ誘導してくれる。「どうしてリングを降りたんだ!」というチャンプの台詞はユウタを責めているというより、試合ができなかったことへのやるせなさを感じて。私が想像していたチャンプは絶対王者、クールで喧嘩っ早いような、闇を抱えたものだったからとても大人で落ち着いたチャンプだと思った。

 

 

< 映画撮影  >

映画の撮影としてユウタが登場するシーンはガウンが剥がされ、あの筋肉がお目見えする訳で、どうしても下心が発動したことは大変申し訳ないと思っている。が、なにより遠くを見つめるユウタの表情。ドヤ顔だなんて微塵もない。役に入りきっているユウタ、チャンプチームが乗り込んできたことにも気づかない様は映画にかける想いを感じた。「撮影はやめられない」とチャンプに訴えるユウタと「リカさんとかなりの額で契約したらしいな」と責めるチャンプ。久しぶりの再会のはずなのにかなり攻めよっている2人の距離感に親しかった面影を感じた。

 

 

< 桟橋 >

星の光る空から はみ出した気がして

せめて寂しい気持ちを 空に浮かべてみた

青い月の光も 僕だけには光らない

何か伝えたいのに 伝えるあてもなく

この空はどこへいくのだろう

いつからか曇ったままの僕の心を照らして

 

桟橋で1人物思いにふけるユウタが歌うこの"星の光る空"。母親に捨てられて頼れる人もいない、伝えたところで誰かが助けてくれる訳もないという孤独感がダイレクトに伝わってきて胸が苦しい。ここは寂しさもあるが、ユウトを守りたいという思いも優しい表情から感じたのと、結局自分でどうにかしなきゃいけないんだという諦めと覚悟も見えて、悲しんで下を向くわけでもなく、前を見据えて歌っているユウタが印象的だった。

 

そこへリカさんがきてユウタに言う、「映画は絶対成功させる、チャンプを長く続けるのは難しいけど映画の中でずっとチャンプとして生き続けられるのだから(ニュアンス)」

その言葉に初めてユウタがちゃんとリカさんの方を向き「生き続けられる?」と聞き返す所、なんだかチャンプがもう長くないことを悟っているような場面だなと思った。

 

その後ユウトがやってきてアドリブが始まる。どうしてもここはユウタではなく岸くんとして見てしまいがちだけど、冗談を言い合う2人は本当に兄弟みたいでとても温かい気持ちになる。そしてユウトがいなくなると表情が変わり「俺に何ができる?」的な独り言を呟くユウタにこちらもすぐに物語へ引き戻される。

 

なんだろう、ユウタを演じている岸くんというかユウタと岸くんが共存しているのか?全然上手くいえないけど目の前に居るのは確かにユウタでそれがあまりにも自然で。"岸くんこんな風に演じててすごいなあ"とか振り返るのは時間が経った後。観ている時はユウタの表情や仕草から"何を考えているのかな?" "こんな気持ちなんだろうなあ“と物語に集中できたことがなんだかすごく心地よかったなと思う。

 

 

< チャンプのジム >

チャンプが歌う"Rebirth"。私はあのレーザーになりたいと思った。踊り狂う姿を近くでずっと見れたらいいのにと思ったくらい神宮寺くんが格好良くて。頭蓋骨に致命傷を持つチャンプは頭の痛みに苦しむシーンが何度もある。"Rebirth"の途中、頭を抱えるも一心不乱に踊り続けるのは、ボクシングへの強いこだわりとチャンプになってもなお、ユウタとの試合ができなかったことに納得できないでいる、もがいている姿なんだろうなと胸が痛かった。

 

映画撮影の条件をかけてチャンプとユウタのボクシングの試合が決まる。

"1、2、3でKnockdown リングにKissしなFight Man"とアカペラで歌うチャンプ。もう鳥肌がたったし絵に描いたように身震いした。ほぼ全員が舞台上にいるあの空間で、ユウタ1人に向かって真っすぐ想いをぶつけているような、重厚感というか。声量があって伸びやかで聞き取りやすいし感情ものっている。もうチャンプから目が離せない。

 

すでにこのチャンプの声から2人の試合は始まっていたのだろう。横顔しか見えないが挑発すると同時にユウタとの試合が楽しみだという気持ちも見えて、思えばチャンプは敵役だけどヒール役ではなくて。これが神宮寺くんらしいなというか、自分にストイックなだけで周りを悪くは言わないところは神宮寺くんと重ねて観ていた。

ジムを出ていこうとするユウタが"Fight Man"を歌うチャンプの後ろ姿を割と長い間じっと見ているのも印象的。チャンプしか見えていないといった感じ。睨んでいる訳ではなくきっと昔の2人を思い出しているのかなという切ない表情だなと思った。

 

 

 < 公園のベンチ >

公園のベンチで"THE DREAM BOYS"を弾き語りするユウタ。ユウトに何を歌っていたのか尋ねられると「これはジンと新人王を目指している時に2人で作った歌だ」と教える。この歌はユウタとジンの絆を象徴する場面で多く登場する。2人にとって大切な歌であることが、ここで分かりやすく表現されているので、観ているこちらもこの歌がくると、まるで昔の2人を知っているかのように感情移入してしまう。

 

ここでもユウタとユウトの掛け合いがある。ユウトがベンチに座るでもなく兄貴の周りをちょこまか動く姿は、無邪気であどけない弟感たっぷりで可愛い。ユウタがお兄ちゃんらしくいられるのもユウトのおかげだろう。だんだん増えるアドリブは舞台ならではで楽しい。

 

 

< チャンプの苦悩 >

頭の痛みに悶えあがくチャンプ。白い衣装の女性ダンサーがチャンプを支配する痛みを表現しているのかそれともボクシングに憑りつかれているチャンプを痛みから助けようとしているのか定かではないが、痛みと1人戦うチャンプがとにかく狂気的で美しかった。長く伸ばした髪がよく映えていたし、ちらっと見える目力の強さに圧倒される。ダンスだけで苦しみや儚さを表現している神宮寺くんのスキルに脱帽した。

 

 

< 試合 > 

ユウタはジンの頭にカウンターを入れてしまったという動揺で、鉛の事を何も言えずに立ちすくむことしか出来なかったんだろうと思った。ジンの顔は狙わないはずだったのに当ててしまった、焦点が合わないような憔悴しきった顔ができる岸くんの演技は純粋に凄いと思った。

 

 

< 仮面の世界 >

マダムはユウタを自分の劇場でかくまう。ここでいう仮面の世界はユウタの幻想、ユウタの気持ちの現れなのかなと。倒れたはずのジンが急に現れてユウタを責めたり、箱に閉じ込められて消されたり。罪の意識からか自らを責めている感情が具現化されているような。俺はなにもやっていない!と言いたいのに言えないのは、やはり誰にも頼れず生きてきたユウタだからなのかな。

 

仮面の世界の中に大技「岸角」がある。ゴムに吊られていてもなお、ここはどこなんだろう?なんなんだろう?と戸惑う表情をきちんと演じている岸くんがいたのでこれが幻想の世界なんだなと感じることができた。岸くんが1人で帝国劇場の注目を集めるとてつもないプレッシャーの中、初めて観た時は少しハラハラもしたけど、爪先まで集中させて丁寧に技を決めていく姿にただただ見惚れていたと思う。ああ綺麗だなと。

 

そして仮面の世界でもがくユウタの気持ちを表す"Nightmare"。

"闇の中で光って心の奥照らして"

"宿命的な罪と罰" 

"天を仰ぐその向こうにanytime but truth 信じたくない"

"幻見えるeverynight"

"教えてNightmare" 

"どこに行けばいい"

 

聞き取れたのはこれくらいで正しいかは分からないが、歌詞の通り悪夢にうなされて苦しんでいるユウタがわかる。自分の感情とは違う行動をとらなければならなかった人生だったんだんだろうな。疲れ切った中でも振り絞って叫んでいるような表情がとても切なくて美しかった。岸くんとして後から振り返ると、もうとにかく色気。劇場中に響き渡ってるんだけど、なんだか耳元で聞こえてくる吐息みたいな声でもあり、勝手にゾクゾクっとしてしまう感じ。ダンスもなめらかで、なおかつ伏し目がちなあの表情、もうお手上げ。皆がNightmareに憑りつかれているのがよく分かった。

 

 

< マダムの劇場 >

リュウガがナイフで刺されたところ、動揺するユウトに「お前は何も言うな」とユウタがナイフを手に持ち罪を被る。ユウトが刺してしまったと理解してから下を向き一呼吸おくユウタ、ここでユウトをかばうことを決意しているような気がして。さらにここでも自分の本意ではない行動をとらなければいけなくなったユウタがもう可哀想すぎる。こんなにいっぱいの荷物を背負わせないで・・今までどれだけ頑張ってきたと思ってるの・・と私の中のオカンが現れてしまう。そして最後の「何もかも引き受けてやろうじゃねえか!」と赤幕と共にオケピに飛び込むユウタに圧倒されて放心状態のまま1幕が閉じた。

 

 

 

2幕 

< 大都会 >

目を閉じたまま 道に迷っている

やぶれた地図も心も 冷たくなる

傷ついたまま 雨に打たれている

悲しみと痛みだけで 息をしてる

 

2幕冒頭は、ユウタが歌う"SadSong"。"目を閉じたまま~"や"傷つけたまま~"と伸ばす所は力強くて訴えかけるような歌声なのに、最後の"悲しみと痛みだけで息をしてる"にユウタの弱さが詰まっていてその強弱に翻弄された。休憩し幕が上がるまでヘラヘラしていた私を早々に物語へ引きずり込んでくれてありがとう・・おかげさまで2幕は最初から最後まで涙との闘いだった。

 

 

< テレビ局 >

ねえきっと僕たちは気づかないだけ

今もこの星は回り続けている

振り向く必要は

ないさ明日を目指して進めばいい

 

病室のテレビから"DREAM BOY"を歌唱する仲間を見守り、もうどうせ無理なんだと夢を諦めてしまいそうなユウト。ネクドリもそうだが、振り返らずにただ夢に向かってけばいいという強い意志がある歌だから余計に夢に対する意思が弱っていまったユウトに聞かせるのは辛いなと思う。ユウトくんの演技もとても上手で見入ってしまった。

 

 

< チャンプの病室 >

 目を覚まさないチャンプを心配するユウトとタイショウ。そして今も逃げているユウタの3人で歌う"THE DREAM BOYS"。それぞれ違う場所にいるけどお互いがお互いを想い合っているのが伝わる。そしてみんな本当に歌が上手い。ユウトとタイショウのコーラス?ハモっている所は声量もあって音程もばっちりですごく心地良かった。

その後チャンプが目を覚ましてユウトと話すところ。試合までは憑りつかれているかのごとく狂気的なチャンプがいたけど、ユウタと試合できたことで呪縛から解かれたのもあるのかな、優しくて穏やかなジンがいた。事情を知り全てを理解するジン、どこかで分かっていたからこそ、ユウタへの想いがあったからこその理解だと思った。

最後ジンが歌うあの微かな声は今もずっと耳に残っている。私が最初に入った中日あたりでは最後まで歌いきっていたけど、最後に入った前楽ではもう最後まで歌えてなくて・・ジン頑張って、あと少しと思っている間に落ちてくる白いバラにグサッと心えぐられる感覚は忘れられない。日々お芝居を変えている様をすごく感じた。

 

 

 < 路地裏 >

 マダムとリカさんの確執が分かった後、ユウタと3人で歌う"Get it!"。ここはユウタが怒りや苦しみを露わにするまでの過程が見えるところが好きだなと思った。後方に歩いていき、せり上がるステージに乗るユウタは拳を震えさせて、今までのように怒りを抑えて我慢しようとしている感じがして。でもそこから仲間達に背中を押されてマダムとリカさんの所へ出ていった時やっと自分の感情を出せたんじゃないかな。岸くんが歌う「もういいよ!」「うんざりだ!」は最初の がなる感じとかもう本当圧巻。ミュージカル俳優でした?ってくらいすんごいかっこよかった。

 

 

<  天国 >

リングの上で死ねるなら本望だ、お前と最後に戦えて良かったと話すジン。もう何言ってんのチャンプ、まだ生きよう?ユウタの人生見届けようよ!!!と引き止めたくなる気持ちと、ユウタと戦えてよかったね、やっとゆっくりできるんだね。という気持ちが交錯してここはもう涙との闘いに敗れ、視界と感情はぐちゃぐちゃ。俺のせいで・・と自分を責めているユウタ、引き止めたいのに引き止められないユウタに、最高の人生だった!と伝えるジンは最後まで本当に強くて優しい人だった。

 

終わらない夢を描こう

雨の日も風の日にもずっと

さあ夢が花開くときを

共に過ごしてゆこうここから

oh the power of dream

親友がいなくなってしまう"現実"とユウトを助けたいという"夢"の狭間で苦しむユウタ。そこで2人が歌う"THE DREAM BOYS"はユウタを夢に向かわせる一歩をジンが手助けしてくれているんだなと思った。"共に過ごしてゆこうここから"と決してお別れする訳ではない、ユウトの中で生き続けるんだからというジンの想いを象徴しているなと。これを後悔しないように丁寧に歌う2人の声はすごく優しくて力強かった。

 

 

< エンディング >

「出会いと別れを繰り返し つまづいたその時よりすばらしい場面をつくりだすために やがて来る明日を信じて」

 多くを語るユウタではないからこの場面で話す言葉達に重みを感じたし、何よりすごく自然な言い方をする岸くんがすごいなと思った。誰か特定の人に向けて発する台詞ではないので会話っぽくはならないし棒読みになってしまいそうだけど、それが全然無く、そのままナチュラルに歌に入っていく。これは岸くんが光一くんから教わった「セリフは歌うように語って、歌う時はセリフのように歌う」を1番感じた場面だった。得たものを形にするまで時間がかかるタイプの岸くんだと思うから、こうして本番できちんと体現できる岸くんはやはり努力の人だなと改めて感じた。

 

ここから"Next Dream×絆"に入り、最初に聞いたNext Dreamの何倍も歌詞が頭に入ってくるし、何倍も皆が輝いているように見えた。

 

 

 

 SHOW TIME

 

"挑戦者"はもう歌い出しからゾクゾクっと。 モニターに歌詞も出てるけど1言1言が聞き取りやすい。サビで頭ぶんぶん振って感情出す岸くんと瞳孔開いて前を見据えて力強く歌う神宮寺くん対照的ですごく好きだ。ユウトとタイショウと向かい合って歌うところでまた号泣。めちゃめちゃいいじゃん・・まとめて養子にしたいよ。

 

そう僕らはDREAM BOYS

心に描いた地図がある

旅立ちの鐘 鳴り響け

そうまだ見ぬFuture

目指して進んだ軌跡が

証となり照らす道の先

Still gonna dreamer 辿り着ける

"DREAM BOY"と"DREAMER"、バックの花火や2人のフライングがとっても綺麗で終始感動。岸くんが踊るDREAM BOYがこのうえなく大好きで。手の振りやステップ、あの表情といい仕事人岸くんが詰まっている。あと2人で向かい合うとくしゃって笑う岸くん、微笑む神くんって最高か。Wゆうたが尊いなんて周知の事実だがそれでも尊いんだから尊いの最上級を教えてほしい。

 

そこからの"King & Prince,Queen & Princess"。岸くんも最高にしびれるのだが、ここでは神宮寺くんの話をしたい。幸運にも3列目で入れた私の初日、泣き崩れながらもこの歌を自然と口ずさんでいると、神宮寺くんが頷きながら微笑みかけてくれているのだ、ものすごく優しいお顔で。もちろん色んな所に目を配り歌っているのだが、きっと1人1人をしっかり見てくれているんだろうと思う。終演後、隣のお友達にも確認したけど同じ事を思っていたようなので、私の思い違いではないはず。なんて素敵なんだろう神宮寺くん。

 

そして皆を舞台に招き入れる2人の所作の美しいこと。特に鳳さんや紫吹さんを迎え入れる綺麗に伸びた手、微笑みかける表情はジェントルすぎる。2人が1番前にいるけど、全員並ぶとみんなが主役に見えたのは、贔屓目かもしれないが岸くんと神宮寺くんが作り出した空間が優しくて温かいからだろう。本当に素晴らしいカンパニーだった。

 

 

 

 

 

幕が降りると現実世界に引き戻されたような感覚になる。さっきまで目の前で観ていたもの、頭にある記憶は一生忘れたくない。そんな充実感と寂しさを感じながら帝国劇場を後にした。しかしながら、一瞬たりとも見逃すまいと集中していたにも関わらず、帰路に着く頃には断片的な記憶になっているのだ。

 

"さっきまで見てた夢なんだったっけ?"とまるで寝起きのよう。でもその感覚が正しいのかもしれない。

 

私にとって舞台DREAM BOYSもジャニーさんをはじめ、多くの方々の想いや信念が詰まった夢、幻想世界を観客に見せてくれていると感じた。

 

3時間舞台を観劇したという現実はあるが長続きしない記憶のせいで夢だったのではと錯覚する。そんな胡蝶の夢のようなひとときだった。

 

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